音質面で比較検討する記事は多く見かけるのですが今回は視点を変えて録音作業で用いられる圧縮オーディオの問題点について検証してみたいと思います。
まず元となるWAVEファイル(44.1kHz,16bit,STEREO)に対してMP3,AACでどのような変化が起こるのか実験してみます。
用意した元データはWAVEファイル、ぴったり10分のファイルを作成しました。
それをDAW、音楽再生ソフトを使ってMP3,AACに変換します。
使用したソフトは以下のとおりです。
・PRO TOOLS 10 (MP3)
・CUBASE 5 & 6 (MP3)
・iTunes (MP3,AAC)
・LAME (MP3)
では検証開始
■ まずPRO TOOLSに各ファイルを読み込みます
元のWAVEファイルは頭とおしりがわかり易いように余白は入れていません。
上から
WAVE(水色)
MP3-CUBASE (黄緑)
MP3-PT10 (紫)
MP3-iTunes (ピンク)
MP3-LAME (緑)
AAC-iTunes (黄)
では検証開始
■ 頭の部分を拡大してみます
ファイル冒頭部分に余白が出現しています。
各ファイルの余白は以下の通りとなりました。
・MP3 Cubase5&6 / 0 sample
・MP3 ProTools10 / 671sample (0.015sec)
・MP3 iTunes / 1056sample (0.023sec)
・MP3 LAME / 2256sample (0.051sec)
・AAC iTunes / 0 sample
Cubase作成MP3とiTunes作成AACは余白ゼロで元の音とサンプル単位でズレがありませんでした。
一方PRO TOOLS10、iTunesMP3、LAMEは余白がかなり多く取られているのがわかります。
MP3のビットレートを変更しても変化は確認できませんでした。
エンコーダーの仕様とみて良さそうです。
意外と大きいズレになっているんですね。
次
■ファイル末尾部分の検証
頭をそろえて並べなおします。
するとここにもズレが確認できます。
・MP3 Cubase5&6 / -20182sample (0.457sec)
・MP3 ProTools10 / +106614sample (2.417sec)
・MP3 iTunes / +1501sample (0.034sec)
・MP3 LAME / +1448sample (0.032sec)
・AAC iTunes / +10856sample (2.450sec)
ファイル冒頭部分の検証で優秀な結果が出たCUBASEがなんとマイナス0.5秒という結果に。
つまりファイル末尾が欠けているのです。
ここはビットレートを低くすると改善されるポイントがありましたが最高音質の状態では何度やってもこの数値でした。
その他のファイルは末尾にも余白が足されています。
これまた冒頭部分で優秀だったAACも末尾の余白は2.5秒とかなり大きなブランクが作成されています。
(ちなみにiTunesに関してはCDから読み込んだ場合は末尾余白は半分になります、またバージョンが10と11では若干数値が異なるようです)
■ 今回の検証でわかること
ここまでの検証結果をみると圧縮オーディオファイルでベストなものは見つかりませんでした。
使い方によりますがここではレコーディング現場で使用する事を前提に考えますのでタイムのズレは問題です。
最近歌入れやダビング作業、録音の時のガイドファイルをMP3で持ち込まれることが非常に多くなっています。
今回の実験結果をみるとCUBASEで作成されたMP3以外のMP3では冒頭に余白があり、もとのデータと時間のずれが起こっている事がわかります。
これでは録音した新しいオーディオデータを元のオケに音に戻すとほんの少し後ろにずれてしまっていることになります。
AACも冒頭部分は優秀でしたが末尾に大きな空白が出来ています。
カラオケなどの場合は問題がおきませんがクリックなどを1小節読み込んで繰り返す、というような使い方は出来ない事がわかります。
またAACファイルはCubaseでの読み込みが出来ないので全てのDAWが対応していないというフォーマットは避けるほうが無難でしょう。
さてここまで読んでおわかりでしょうか
スタジオや録音用にファイルを持ち込む場合はWAVEまたはAIFFがベストです。
ベストというかそれ以外ファイル形式は使うメリットがありません。
HDDやUSBメモリーも大容量で安価なものが手に入る時代です。
データ量を気にしてタイミングがずれた音が録音されるようではどうしようもありません。
■結論
録音用のガイドオケ、音声ファイルはWAVEかAIFFにする
覚えておいて下さい。
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