・音と言葉の関係について
音楽の仕事現場で交わされる言葉というものがあります。
音楽的な用語はもちろんですが 音色を表現する言葉というのは実は曖昧です。
例えば、プロデューサーが「もっと太くして欲しい」と言ったとしてエンジニアはどう処理するのが適切でしょうか?
そもそも 太い とは音を表す言葉ではなく本来は物の直径などを表す言葉です。
太い という表現は様々な解釈があり、単に低音を強調するという方法ではないかもしれません。
実はこのような 音色を言葉にする という行為でしか音色、サウンドを表現できないのがサウンドメイキングの難しさの1つではないかと思っています。
私は別の角度から音色表現について考えてみました。
ある実験データで「色と言葉の関係」というものがあります。
これは色を表す言語によって色の見え方に差がある というある研究チームの実験なのですが一部の地域で使われているある言語では色を表す言葉が4種類しかなく、実際にテストをすると西洋人と違う色認識をしている という実験結果が出たのです。
つまり、赤い色は 赤 というキーワードで脳が認識して赤い色を彩色している というのです。
逆を考えると 色を表す言葉が多い言語で育った人間にはごく僅かな色彩の変化も感じることができて違う色世界に見えるのではないでしょうか?
非常に興味深い実験でした。
私は これは音色にも同じ事がいえるのではないか?と思ったのです。
音色とはよくいったもので音の色彩です。
あたりまえですが音には色は付いていません。
目に見えない音というものを表現する時には先に触れたように言葉で表現するのですが
この音色を言葉にする時の表現方法が豊富な人はサウンドメイキングもより幅広く、センスのある捉え方ができるのではないか?と私は考えました。
最初にあげた 太い という表現を別の言葉で表現すると
太い≒重い、ヘビー、ファット、重量感がある、どっしり、重厚、厚い
他にも擬音を使ったりと様々な言葉が当てることができると思います。
これは自分ひとりでミックスダウンなどをしている時にも同じような思考が働いていて
「どんなサウンドにするのか?」という事を考える時に、単純に明るい暗い というような言葉だけでなく
様々な表現方法で考えてみるのも音色を捉えるコツではないでしょうか?
また、他にも自然現象や触感、映像表現的な表現も音色を表すのに適しているかもしれません。
シルクのような、朝もやのような、雲の切れ間から光がさす様な、水面に水滴が落ちる瞬間のような、壁をぶち破るような、夕日が沈む瞬間のような・・・
と誰でも一度は映像で見たことのあるイメージも使えると思います。
いつも感じるのですが、音色を人に伝えるのは非常に難しい事です。
これは自分一人のときも同じで どんなサウンドにしたいか?という事を考えたり、人に伝えたりする時に様々な言葉を使うことでより的確でイメージを共有しやすい事につながると私は考えます。
どんな音にしたいのか?
そう思った時には思いつく限りのありとあらゆる言葉の表現を使って考えてみて下さい。
きっと新しいアプローチで音色について向き合うことができるはずです。
私の勝手な仮説ですが何かの参考にしていただければ幸いです。
おわり
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