ひどい業者の話~マスタリング編

少し前 2012年くらいの話です。


私の知人から、ある業者(以下F社)にCD制作を依頼して出来上がったCDを聞いたところ
「音が割れている」 という苦情をうけた という相談をされた時の話です。



(補足です:知人は割と年配の方で作詞・作曲と歌唱を行っています。今回の案件ではF社にアレンジ+レコーディング+マスタリング+プレス+カラオケ配信までをパックで依頼していた という状況となります。ですので知人は機材や作業についてあまり詳しくなく言われるがままの状況だったようです。しかも金額はかなり高額でした)


実際にCDの音を聞いてみると 明らかな歪も感じたのですが、全体にマキシマイズがきつく
とてもジャンルに不相応なサウンドになっていました。
ちなみに ジャンルは歌謡曲です。


早速F社に連絡をとり、状況を説明したのですが、のらりくらりと話をごまかすばかり。
しまいには
「マスタリングは外注しているから知らない」 とまで言い出す始末です。


結局 マスタリングを行ったProTools LE8 のセッションデータが残っていると言うことなので
こちらに渡してもらい、中身を確認してみました。


まず、ProTools LE 8 っていう所で言いたいことがあるのです・・が
それはおいておいて・・・  セッションの状態です。
















インサートのルーティングですが


Bombfactory BF76

WAVES C4

WAVES S1

EQ3 4band

WAVES Q10

WAVES L3LL

メーター類2つ



となっているようです。


そしてご覧のとおりに 全てのプラグインで赤が点き、レベルオーバーしています。


PT LE8でもWAVESのプラグインは多少のクリップは大丈夫なのですが
付属のEQ3まで真っ赤とは・・・
L3-LLのディザリングも16bitにしていないとか 気になるところは多々あるのですが
・・・・


もう 言葉が出ません。


これ マスタリング業者 (自称) ですよ?




当然ながらクレームを出したのですが、結局マスタリングした本人に連絡をとる事になりました。

そこでもびっくりするような自体が起こります。
メールで事の一部始終を伝えてマスタリングした本人から返事が来ました。



以下、一部掲載します。

私がマスタリングをF社にて行なっております。
ProToolsのセッションファイルのプラグインがレベルオーバーになっているのは実際に作業をしたプラグインの設定とは違うからです。


F社から「●▲さん側からセッションファイルの提出を求められてる」という連絡を受けた際にF社のHDDにセッションファイルは残したままでしたので全て差し替えるように指示をしました。

近年ProToolsでのレコーディング化が当たり前になり、勘違いしている方々が多いのでご注進申し上げますがプラグインの設定はエンジニア、ミュージシャンにとっては自分のサウンドのノウハウであり命綱です。
言ってしまえば企業秘密です。

悪意のある相手にそれを渡せば勝手に改変されることも十分に考えられます。
ですので、マルチデーター(Mixデーター)の納品を求められた際も私は一切プラグインは外して納品します。

TVミックスや色んなバージョン用の作成も馬鹿なA&Rに勝手に変えられては困るのです。

私の場合は作家、アレンジャー、SoundProducer、Producer、エンジニアまで全て請け負うので特にシビアな観点になります。

以上のことからお渡ししているだろうと思われるセッションファイルのプラグインの設定はクリップして当たり前のデタラメなファイルになっております。

今回はたまたまマスタリングだけを依頼されましたが、マスタリングだけにしても同様です。

通常のメジャーメーカーの原盤制作業務委託契約書におきましてもマルチデーターを納品する旨は記載されておりません。あくまでも最終的な2Mixが原盤として扱われます。
ましてやマスタリングになると納品形態は2Mixのみが当然です。

もし、●▲さんが法的にどうこうしたいのであればいくらでも受けて立ちますし
歪んでいるだのどうのこうのというお話であれば公的機関にて正式な鑑定書類を提出して下さい。

ご存知のようにピッチを補正すれば当然、原音の倍音成分はは崩れていきます。
マスタリングすれば更にそれは目立ってきます。至極当たり前のことです。

逃げるわけでも何でもありませんが、もし当方のミスだということで争うのであれば今後は弁護士を通していただくようお願い申し上げます。

とまあ、喧嘩ごしの酷いメールが帰ってきたわけです。

ちなみに、受け取ったクリップしまくりの状態でバウンスした音とCD収録の音はほぼ位相反転で音が消えましたので、間違いないとは思うのですが


「文句があるなら弁護士をたてて、公的機関にて正式な鑑定書類を提出しろ」

 

とは・・呆れるばかりですね。

話題にしていないピッチ補正の事とかを何故か勝手に弁明してきたり、クライアントの事を"馬鹿なA and R"なんて呼ぶあたり 人間のレベルが現れています。

最終的に連絡がとれなくなり、被害者も関わりたくないという事になったので
泣き寝入り で終わっています。


名前を晒してやりたいのですが、それはできませんので、せめて 今回の記事が


こういう酷い事がインディーズ業界では行われている 

という啓発になれば幸いです。

本当に気をつけましょう。

私の感覚だと インディーズ界隈の自称プロの音楽制作業者の8割が 多かれ少なかれこんな状況です。


こんなひどい事がありました~マスタリング編 でした。


おわり 


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2 件のコメント :

  1. シバイタロカ2015/01/21 3:26

    納得というか...してしまったので思わずリアクションです。
    私自身もでiTunes他で販売する用に数人のプロフェッショナルと称する人間にミキシングやマスタリングを頼み、それなりの銭を払ってたのですが、どう聴いてみても「はぁ?コイツ、耳ついとるんか?」という楽器の音や響きを把握してない仕上がり。もーあまりにもアホらしくなってしもて「ほなもぉ自分でやったるやんけ!」と、ココに辿り着き、考え方を読ませてもらう度に納得してます。
    余計な話はさておき、
    > インディーズ界隈の自称プロの音楽制作業者の8割が 多かれ少なかれこんな状況です。
    というのを"まかり通してしまおう"と裏で結託してるのではないか?と思うくらいです。"トーシロなんだから携わるエンジニア全体でコレをゴリ押ししてしまえばそういうもんだと諦めるだろう..."みたいな。
    で、ツッコミを入れられたら「じゃあ何をどう"操作"して欲しいんだ?」というオペレーターレベルの対応しかやらないというスタンスの奴が多過ぎる。
    クリエイター?を気取るんなら、「こうした方がもっと良くなる」というのを提案してやるべきであって、金さえ取れればプロと称して良いというものではないと思いますです。ハイ。

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  2. 許せねぇ

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