レコーディングと編集は魔法ではない話-その1 楽器録音編

レコーディングと編集の誤解
ProToolsの編集画像です

 レコーディングと編集にまつわる誤解
~楽器録音編~

レコーディングや音楽制作をコンピューターで行っているミュージシャンや音楽関係者であれば知っている事でも、アマチュアの方や事務所関係者、普段レコーディングなどを行わない方などからすると大きな誤解が生じている場面に時々出くわします。

今回は"よくあるケース"から"ええマジですか?!"となるレアケースまで
レコーディングと編集に関わる誤解を実例を交えて説明してみたいと思います。



■DAWは魔法ではありません

proToolsをはじめ、録音や編集を行うDAWソフトではテープベースで作業していた時にはできなかった複雑な手法や細かな編集が可能となりました。
しかしながら 何でもできる、何でもどうにでもなるわけではありません。
できないこと、できるけど不自然になること、できればやらないほうが良いことなど制限はあります。

できないこと その1「音の分離」

「音の分離」とはかぶり除去の事です。
よくあるパターンで同じ部屋で録音している別々の楽器の片方だけ間違えたから録り直したいというもの。
バイオリンとチェロなどの場合ですが、基本的に録り直す場合は両方直さないといけません。
電気楽器のLINE録音以外では全て同様です。
マイクが別々に立っているから、マイクが向いている方向の音以外は録音されていない・・と思われている方が多く存在します。


できないこと その2「テンポ管理されていない曲のコピペ」

メトロノームを使わずにフリーテンポで演奏したものの1番のサビを2番にコピペ(複製)する、などは出来ません。
テンポが合いません。
当たり前なのですが結構やりたがる場面に出くわします。


できないこと その3「特定の音の除去」

ピアノ録音などで「このミスタッチだけ消したい」という要望が出るときがあります。
MIDI録音ではないので基本的にはできません。
一部の特殊ソフトでも完全に消すのは無理です。録り直すか別テイクがあれば差し替えるしかありません。


 不自然になること その1「部分差し替え」

フリーテンポで演奏した場合、途中部分を録音し直すことで不自然になる場合があります。
ピアノソロ等の場合 A-B-C-D という中の B部分だけを録音するとCとつなげるとテンポの速さが違っていて不自然になります。
また、バンドアンサンブルなどでブースセパレートをして録音したものでも、ドラムなどリズムの軸になるパートを部分的に直すと他のパートとずれてしまうことがあります。

不自然になること その2「過度なタイミング修正」

バンド系であるのが「ドラムをクオンタイズしたい」というものです。
BPMに合わせて演奏した音をさらにタイミングを1音1音編集するというものですが
ドラムの場合はシンバルなど音が長いパーツもあるので過度の修正は音切れや不自然なつながりになるのでオススメしません。
その前に編集のほうがものすごい時間がかかりますし、そんなにタイミングだけ合わせた音源を作りたいだけなら打ち込みドラムにしたほうが100倍幸せになると思います。


 不自然になること その3「テンポやキーの変更」

録音した後で「もう少し早くしたい」「遅くしたい」という 事があります。
テンポの変更はタイムストレッチ処理を行うのですが音の劣化が発生します。
特に遅くする時にはひどいです。
またドラムなどマルチトラックの楽器をパーツごとの状態でテンポを変えると位相がおかしくなってしまう事もあります。
同じくキーを変えるのも大きく音質が悪くなります。
テンポやキーの設定は録音前にきちんと確認しましょう。


できればやらないほうが良いこと「馴れていない人の部分修正」

部分的に演奏を録り直す事を「パンチイン」と呼びます。
パンチインをする場合は場所にもよりますが、馴れている人、演奏の上手い人だと問題になりませんが、馴れていない人、演奏が上手くない人は注意が必要です。
たとえクリックを使ってテンポ管理されている曲の場合でもパンチインでダメな事が多々あります。
例えば、ドラムはシンバルなどの余韻が残るので、パンチインする前後を同じ演奏をしないと繋がらない事があります。
急に余韻が切れたり、余韻が突然出てきたりするというものです。
他の楽器でもそうですが、やっている事や音の強さなどが揃わないとうまく編集で繋がりません。
毎回違うことを演奏するとかタッチが調整できないような人は結構苦労することになります。



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